名演小劇場の休館に思う。

一昨年に撮影取材した名古屋の老舗映画館 名演小劇場が3月23日以降、休館することが決まった。昨年50周年を迎えたばかり。演劇の劇場として産声を上げて、2000年代に映画館になった。

動員の低下と燃料費の高騰、経営の悪化に伴い、運営を続けることが困難になったとのことだ。

 

邦画バブルと言われたのはもう十数年前だったか。制作費の低下の兆しはデジタルの台頭により加速し、パンクしたまま走っていると思った制作現場の多くは今では目も当てられない制作費で乱発されている。

そしてまた配給の有る無し、劇場での良作の拾い上げも、違う次元で制作とは大きな開きが有る。

このことは現場70本以上参加し、縁あって土肥劇場を開館し、伊豆映画祭を行っていた時期に、身を以て知った事実であった。

さらに近年、現場の後輩たちが自作の長編映画をプロデュース・監督し、公開しはじめていた上で、同様に大きな課題を感じていることは紛れもない事実である。平たく言えばかけるべき邦画を上映する映画館は実に少ない様に思える。

そして一般の観客もまた、シネコン、配信に流れており、良作の選別のしきい値が宣伝とイコールになっている危機感もある。

折しもコロナ禍によって緩やかだった失速はより現実的になった。東京ではアップリンク渋谷、ユジク阿佐ヶ谷、岩波ホール、渋谷東映・・と閉館し、全国でも幾つも閉館が続いている。それぞれの理由はあるにせよ、続けられない動員の低下はやはり拭えない。

この淘汰が時代の流れ、抗いようもない現実だと言ってしまえば話は簡単だが、果たしてそれでいいのだろうか。多種多様な映画を映画館で味わい、そのときやその一日を少し豊かな心持ちとなって過ごす。その機会を無くしても。

日本人が年間、映画館で映画を観る回数は平均一回余り。

他国と比べても実に少ない。

一度も観ない人が観に行く。もしくは2回3回と見る機会を作るだけで、映画界は今とは全く違う風景となるだろう。

娯楽が多様化し、忙しさも種を変えた現代ではあるが、映画らしい映画と映画館はどうか続いて欲しい。

私は私の抗い方で闘ってゆくのだが。

ただそう思うばかりである。

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